おばさんの恋

40代になっても恋に憧れるおばさんの妄想

干からびた恋

日本に帰ってきました

突然のメールが届いた

 

いろいろ風の噂に聞いています

久しぶりに会わない?

 

バカの見本みたいな文章

これで会いたくなる女の顔が見たいわ。

 

悪いひとではなかった

でも、もう会いたいとは思わない

お互い歳も重ねたことだし

幻滅するだけだと思いますけど。

 

完全に干からびている

こんな恋に

わたしはすがらない

 

会ってもはなすことなんかないもの

1ミリたりとも

別れたことを公開していない

つまんで捨てましょう

干からびた恋。

 

 

くよくよする恋

久しぶりにあのひとに会った

仕事の話だけれど

まっすぐ通った鼻筋と

綺麗な二重にわたしの目は釘付けだった

いつまでも見ていたい

うっとりしているうちに

再会は終わりを告げる

待って、まだここにいたいの

わたしの心は叫んでいたけど

それじゃあと言って

あのひとは人混みに消えていった

 

わたしはまたしても

要領を得ない話ばかりしてしまったことに

激しく後悔するのだった。

昔の恋を思い出しても

虚しいだけよ

今更わたしに何が必要だというの

 

わたしはまた凹んでいる

かすりもしなかった恋に

わたしはまた落ち込んでいる

泣きじゃくりたいほどに

 

明日は台風だ。

さあうちへ帰って

雨戸をしめよう。

 

恋ではないけれど寂しい

彼とはもう15年くらいの付き合いで

よく2人で出かけたし

彼の車に乗せてもらった回数は
彼女よりも多かったかもしれない

彼はとても頭の良いひとで

いつも何を話しても
的確な答えをくれた

年に数回しか会わなくなってもう10年
遠くへ引っ越すという
急に寂しくなって会いに行った
会えばわたしたちの時間は
いつでもあの頃に戻るのだった

恋ではなかった
ふらついたこともなかった
だけど、とても大切なひとだった
いつでも会えると思っていたのに

ひどく寂しくなった


またいつか逢おうね

大切なひとほど

会えなくなるまで気付かない

わたしはバカだったな

働かない男

年度末で忙しい日々

向かいの席の爺はいびきをかいて寝ていた

飲み会が続きお疲れのご様子

平和ですね、バブルに塗れた世代は。

 

後ろの席のオッサンは

いつもTwitterで遊んでいる

月にどれだけデータを使っているか

知られていないとでも思うのか

 

隣の島の男は

仕事時間中にエロサイトを見て

ウィルスにやられているようだ

そのくせ、完全スキャンの勧告をスルー

アンタがどんなサイトを見ているか

職場中に晒してやろうかと

心の中で毒づいている。

 

ああ、不思議なもので

働かない男たちは逃げおおせるのだ

そして、真面目に働いているものが

どういう訳か地雷を踏む

 

誰も救われないし誰も助からない

そういうものなのだ

アホらしい。

 

 

枯れた恋

恋が終わって久しい

彼とはもうあまり話さないの

でも、間が空きすぎると寂しいから

ついついLineしてしまったりして

あなたがくれた〇〇を使っていますとか

2人で行ったあのお店の前を歩きましたとか

 

何なの?気をひきたいの?

忘れていないってアピールしたいの?

 

つまらないゲームは終わった

恋はとうの昔に枯れた

映画を観て、サンドイッチを食べるような

大人の恋にあこがれたのに

いつのまにかわたしはひとりぼっちだ

気持ち悪い恋

学生の頃住んでいた町

甘酸っぱくて、痛々しくて

もう戻れない日々が

スクリーンの向こうに広がっていた

 

この通りをわたしは

泣きたい気持ちで何度も歩いた

もう、昔のことだ

忘れていいんだよ

幸せになってよかったんだよ

 

なぜあんなにも苦しかったのかな

苦しい恋ばかり選んだのかな

立っていられなくて

道端にへたり込んだ日を

あの人は覚えているだろうか

 

苦しかった

どうしようもなく

暑い夏だった

床を転げていつまでも泣いた

 

時々思い出すけれど

死んだ蝉のようで

とても気持ち悪い

おばさんになってもなお

わたしは自由になれない

 

 

小説の恋

週末は東京へ行くよと

オーストラリア人の彼はメールをくれた

学会でもあるのかと思ったら

わたしに会いにくるという

もう10年ぶりくらいで

あの頃と変わらない調子で

ぼくのホテルの部屋で

ピザでも取ってビールを飲もうと言う

わたしはあっさりと

それはできない、夫がいるのよと答える

彼はOKという

いったい何を話して過ごせばいいのか

ただわたしに会うために

はるばるやってくる人と

わたしは少し憂鬱になって

小さくため息をつく

なんで空いてるって言ってしまったのか

夫は相変わらず

メールの返信をよこさない

既読すらつかない

それでも帰る時間を知らせるし

買い物はあるかと毎回聞くのに

彼の部屋で

ピザとビールと甘い抱擁

わたしは妄想するのだった

受け入れるはずのない誘いに

応えている自分の姿を