おばさんの恋

40代になっても恋に憧れるおばさんの妄想

抜けない棘

何かがひっかかっている

何だかもすぐに思い出せないほど

どうでもいい日常のさざ波


部下に言ってしまった余計な一言とか

同僚からのダメ出しとか

つまらない仕事のミスとか


ほんのささいな出来事が

抜けない棘みたいに

違和感として残っている


なんだろう、このざらついた感触は

図書館で借りた小説の

後味の悪い終わり方

洗いざらいぶちまけて

彼に呆れられてしまえばいい


男に振り回される人生は

もう終わりにしよう、

昔わたしを振った男が言ったっけ


はたと気づいた

違ったのだ

わたしが終わりにすべきは

男を振り回す生き方なのだ

無邪気さを装って

痛いところに手を差し伸べる残酷さ

病気みたいなもの

見えてしまうんだもの

どこが痛んでいて

どんな風に声をかけて欲しいのか

恋とか愛ではなくて

ただわたしは必要とされることを望んでいる


棘は

後味の悪いざらつき

虜にした相手が

いつか夢から覚めることへの恐れ