何かがひっかかっている
何だかもすぐに思い出せないほど
どうでもいい日常のさざ波
部下に言ってしまった余計な一言とか
同僚からのダメ出しとか
つまらない仕事のミスとか
ほんのささいな出来事が
抜けない棘みたいに
違和感として残っている
なんだろう、このざらついた感触は
図書館で借りた小説の
後味の悪い終わり方
洗いざらいぶちまけて
彼に呆れられてしまえばいい
男に振り回される人生は
もう終わりにしよう、と
昔わたしを振った男が言ったっけ
はたと気づいた
違ったのだ
わたしが終わりにすべきは
男を振り回す生き方なのだ
無邪気さを装って
痛いところに手を差し伸べる残酷さ
病気みたいなもの
見えてしまうんだもの
どこが痛んでいて
どんな風に声をかけて欲しいのか
恋とか愛ではなくて
ただわたしは必要とされることを望んでいる
棘は
後味の悪いざらつき
虜にした相手が
いつか夢から覚めることへの恐れ