おばさんの恋

40代になっても恋に憧れるおばさんの妄想

観葉植物

一人暮らしの殺風景な部屋を見かねたのか

ある日その人は

誕生日でもクリスマスでもないのに

シンゴニウムの鉢を持って玄関に現れた。


これ、貴女にいいかなと思って。


観葉植物

匍匐茎   ほふくけい

シルキーという品種で、白い葉が特徴的。

日光は不要とのこと。

でも、わたしは緑が濃いほうが好きかな。


水をやるだけでどんどん伸びた。

あまりに育つから

茎を切って水に入れておくと

また根が生えて

株がどんどん増えた。

その度に植木鉢やら土やら皿やら

わたしの部屋には物が増えていった。


シルキーをくれたひとは

株が増えたわたしの部屋を知らない。

すぐに仕事で遠い国へ行ったから。


一時帰国のメールが届いたのは2年後。


結婚しました。

2月に子どもが産まれます。


おめでとう

こちらは、シンゴニウムの株が増えたよ、とメールを返すと



貴女らしいね。

もう一度会おう、と。

なんと答えたかは覚えていない。

会わなかった。

もう会うことはないと分かっていた。


シンゴニウムはその後

ある暑い夏にみんな枯れてしまった。

本当はわたし

そんなに好きじゃなかったのかな。

彼のことも

観葉植物も。