かつて自分が苦しめられたのと
同じ状況を作り出している
男は家に帰っていった
ほんの短い逢瀬が男との全てで
何もかもが嘘っぽかった
今度はわたしが加害者
わたしの方から誘惑して
彼の心をざわつかせている
いや、違うのか
あの頃もわたしが男をたぶらかして
陥したつもりが弄ばれていた
何もかもが嘘っぽかった
そのくせ、世界中を敵に回して
一人で戦っているつもりだった
何もかもが安っぽかった
燃やしてみたら灰すら残らないほどちゃちだった
結局わたしは
いてもいなくても同じ存在だったし
さほど必要とされてもいなかったんだ
もういいよね
もう、どうだっていいよね
彼が好きだ
破滅的でどうしようもない恋
好きでいるだけで
手を伸ばしてはいけない恋