そのひとは背が高くて
長い指でフルートの早いパッセージを
スラスラと吹いていた。
綺麗な指に見とれる。
そのひとは
わたしの息子とよく遊んでくれた。
結婚して子どもを持つなんて
僕には想像もつきません、と言いながら
楽しそうに息子に高い高いしてくれた。
わたしより5歳くらい歳下かな。
音楽とお酒と自由をこよなく愛するひと。
ふとした仕草や言葉が
周囲を和ませる。
でも、こういうひとには
近づきすぎてはいけない。
その優しさを、恋愛感情なんじゃないかと
思い上がってしまうから。
ちょっとときめく。
また会いたいと思う。
でも、ほとんど会う機会はない。
おばさんのほのかな恋は
それくらいで、ちょうどいい。