何を思ったか
彼が洋服をプレゼントしてくれると言う
ショッピングデートで素敵な街へ
でもわたしね
欲しいものなんてないの
靴とかコートとか言ったものの
彼に散財させたくないし
気に入ったものも見つからない
時間ばかり過ぎて焦る
ごめんなさい、女の買い物につきあわせて
飽きたでしょ?
呆れたでしょ?
僕も楽しいからいいんですよと
彼は優しく答える
なんでそんなにいい人なんだ
でもわたしは知っている
結婚したらそんな優しさが
いつまでも続かないことを
こんな色はどうですかと
彼が選んでくれたセーター
試着してみた
鏡に映った自分は
中肉中背のくたびれたおばさんだった
その瞬間に
悲しいほど夢から覚めた
ああ、わたしったら現実を置き去りに
何をウキウキはしゃいでいたんだろう
オトメになったつもりで
なんと見苦しく笑っていたのだろう
楽しい時を過ごさせてもらった
もう帰らなきゃ
人生のいい時は終わった
あとは緩やかに降りていこう
少しずつ、持っていたものを手放して
似合わない服から卒業して
ゆっくりと歳をとっていこう
似合わない服が教えてくれた
もう戻れない時間を